経験者の声

孤独から一歩だけ踏み出して

突然経験することになった病気・治療に対する不安や負担、様々な生活上・心理上の困難。立ち止まってしまい、絶望の中にいた日々を一歩だけ踏み出し、医療者ではない人達にヘルプを求めてみる…そこから見えてきたものがお子さん、ご家族、私たちそれぞれにありました。

ここに体験の一部を紹介させていただきます。皆さんと出会い教えていただいたことを大切にし、私たちも成長する法人でありたい、と考えます。

小6男子の母

次男を小児がんで亡くしました。

学校には「友達やほかの先生方には言わないでほしい」とお願いをしに行き、約束をしてくれたにも関わらず、病名以外はどこの病院で最初見てもらい、今はどこの病院に入院しているのか、どんな状況なのかを、先生はクラスの子どもに話してしまいました。

その時、私は「他人は子供を守ってくれない」と思い込んでしましました。

またある看護師さんから「ほかのお母さん方と話をあまりしない方がいい」と言われたこともあり、私の中では「人と交わらない・話をしない・情報を漏らさない」ということが彼を守る一番の選択だと思っていました。

そして再発をした時のことです。また病気の治療だけでなく、人間関係でも同じ悲しい思いをしました。

その時我慢ができずに相談したところ、行政や学校関係の方が話を聞いてくれ、協力をしてくれました。また転院した時には、同じ環境のお母さんが話しかけてくれ、一緒に喜んで一緒に泣いて共感して、仲間となてくれました。

もし初発の時も私が意固地にならずにもっとたくさんの人に甘える努力をしていたならば、次男はもっとたくさんの友人や知人と有意義な時間が持てたのではないかと思います。数えきれないくらいの後悔の中で、彼を孤独にしてしまった事はおおきな後悔の一つです。

長期入院中でも、大好きな友人や知人との時間を作ってあげる努力・・・もっともっと彼にしてあげたかったです。

もし今病気のお子さまを持つ親御さんがいらっしゃったら、殻にとじこもってしまわずに、誰かに甘えてほしいと思います。近くの人がダメなら、同じ経験をした他人やいろいろなサポート団体に頑張ってコンタクトをとってほしいと思います。

すべての思いが叶うかどうかは分かりませんが、一緒に考えてくれる方々がいます。私と同じ後悔をする方が減ることを、そしてお子様の病気が治ることを願っております。

患児の母

息子は小学校1年生の時に発病し一年間地元の病院で治療した後転院、そこであるサポート団体の「お兄さん」と出会いました。

治療の合間に登校する院内学級。病気のことを忘れ遊んだり勉強したり。部屋から出られない時には「お兄さん」が遊びに来てくれました。

親でも兄弟でも先生でも友達でもない…息子に寄り添い充実した時間を過ごさせてくれる「お兄さん」。大変な治療、暗くなりがちな入院生活の中での輝かしい時間でした。「お兄さん」の存在が生活の質を高めてくれました。

つらいとき、悲しいときに寄り添ってもらった経験は次なる「お兄さん」を育ててくれると信じています。いつの日か息子も「お兄さん」のように人に寄り添える人になってほしいと思います。

高2男子の母

長男は突然発症した病気治療のため入学したばかりの高校を休学し、病院に入院しました。本人も家族も毎日の生活の望みを失い。治療の副作用もきつく、無言で天井を見つめて涙を浮かべている日々でした。

しかしながら治療が進んで経過がよくなった時、彼の頭に浮かんだのは「復学したい」という思いでした。小中学生には院内学級がありましたが、高校生の学習のサポート機関は一切ありません。そこでもまた、超えるべき壁の高さに絶望しました。

そんな悩みを主治医の先生方や看護師さんに相談したところ、サポーターの方々を紹介してくださいました。そういえばデイルームで、大きなお兄さんお姉さんとゲームしたり談笑したりする治療中の小学生の明るい笑顔が気になっていました。生活の制限が厳しく、つらい治療の合間なのに、楽しく過ごしている姿は不思議に映りました。

早速長男のところにも来ていただいて、復学に向けた英語指導を始めていただきました。英語を専攻する大学生の方は長男と年齢も近く、的確に教えて下さり、週1回の学習をそれは楽しみに予習をしていました。治療に並行してベッドに腰かけて勉強する時間が格段に増えました。病室に閉じ込められた魂が外の世界へ目を向け、何か大切なものを取り戻していくようでした。1年間休学しましたが、この時の学習を糧に自信をもって復学できました。

病室にいても環境さえ整えば、本来の自分らしさややる気、生きる力を少しずつ取り戻せることを教えていただいたような気がします。

今この瞬間も苦しみ悩んでいる方々がいらっしゃるのでは、と思うと心が痛みます。何処かに「助けて」「聞いて」とサインを出すことで小さいけれど一歩だけ進めることが、私たち経験者のメッセージとして届けばいいな、そう願っています。

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